インターネット広告の世界では、ますます機械化の流れが進んでいて、運用担当者の手間を削減してくれる機能が次々と登場してきています。その中の1つが、Google広告の入札戦略です。
Google広告の入札戦略では《スマート自動入札》と呼ばれる自動入札機能があり、運用担当者が手動で管理するこれまでの調整方法とは異なり、キャンペーンの目標を達成するために、自動的に入札単価を調整することが出来ます。その自動調整機能は日々進歩を続けており、ますます精度の高いものとなってきています。
今では、導入しないリスクの方が高いといえるかもしれません。
とはいえ、
「設定したいけど、入札戦略から何を選べばいいのかわからない・・・」
「自動入札って本当に効果がいいの?」
「自動入札機能を導入したら仕事がなくなる・・・(汗)」
なんて悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
実は、Google広告の自動入札機能には、ただ予算進捗や数字の進捗状況に合わせて機械的に、入札単価を調整してくれるだけではなく、手動の入札調整では出来ない微調整で、手動の入札調整よりも効率的に広告オークションに参加する仕組みがあります。
まだ、入札戦略を変更されていない方は、是非参考にしていただければと思います。
【目次】
- 進化するGoogle広告のスマート自動入札機能
- スマート自動入札機能で用いられるユーザーのシグナル
- Google広告の自動入札戦略は何を選ぶべきか
- コンバージョン数の最大化
- 目標コンバージョン単価
- 目標広告費用対効果制(目標ROAS制)
- 拡張クリック単価制
- 自動入札機能を導入しても仕事はなくならない
- まとめ
①進化するGoogle広告のスマート自動入札機能
自動入札が登場するまでのGoogle広告では(その頃はまだGoogle Adwordsと呼ばれていたはずですが)、広告グループ単位、もしくはキーワード単位に個別の入札単価を設定して、それぞれ日々の効果や、予算の進捗状況を見ながら個別に入札単価を調整していく必要がありました。
手動で入札単価を調整する場合、それぞれのキーワード単位でクリック単価や掲載順位、コンバージョンの獲得数とその獲得単価など、様々な指標を読み解きながら入札単価を調整しなければなりません。当然、ユーザーの検索語句や検索回数などは日々変化しており、毎日同じということにはなりません。そのため、手動による入札単価の調整は、運用担当者にとってかなり工数のかかる作業であったかと思います。
Google広告のスマート自動入札機能では、そうした運用担当者の作業工数を削減しながら、コンバージョン数の最大化や、目標CPAに合わせたこれらの調整を、自動で調整することが可能になります。
◆スマート自動入札機能で用いられるユーザーのシグナル
スマート自動入札機能では、コンバージョンに到達しそうなユーザーを分析しながら入札を調整しています。この分析の材料にはユーザーの様々なシグナルが用いられています。
自動入札機能では、手動入札では調整することのできなった、ユーザーのシグナルに対しても調整することが可能です。
スマート自動入札機能で用いられているユーザーのシグナルには下記のようなものがあります。
・デバイス
・所在地
・時間帯
・ユーザーの属性(性別、年齢など)
・実際の検索語句(検索クエリ)
・OSとブラウザ
など
デバイス、所在地、時間帯、ユーザーの属性に関しては、従来の手動での調整も可能でしたが、スマート自動入札ではこれらのシグナルを掛け合わせて総合的に判断され、コンバージョンの可能性が高いと判断された場合は、通常よりも強めに入札を調整することが出来ます。逆に、コンバージョンの可能性が低いと判断された場合は、入札の調整が弱められます。
また、スマート自動入札機能ではユーザーの実際の検索語句単位でも入札が調整されます。これは従来の手動の入札調整では調整することが出来ないため、スマート自動入札を導入することにより、利用できる機能の1つとなっています。検索語句単位で入札調整をすることにより、コンバージョンの可能性が高い検索語句に対して効果的に配信することが可能となります。
手動での調整の場合、そのセグメントに対して一律の調整がされてしまいますが、スマート自動入札機能では、オークションごとにユーザーのシグナルが分析され、オークションごとにリアルタイムで入札を最適化するように調整がされています。
②Google広告の自動入札戦略は何を選ぶべきか
Google広告のスマート自動入札機能では、下記の入札戦略を選択することが出来ます。
◆コンバージョン数の最大化
「コンバージョン数の最大化」では、設定されたキャンペーン予算を消化しながら、獲得できるコンバージョンの数を最大化できるようにオークション単位で自動的に入札単価を調整しています。「コンバージョン数の最大化」では、設定されたキャンペーン予算を使い切るように調整するため、共有予算の設定はできません。
目標コンバージョン単価制、目標ROAS制と異なり、キャンペーン予算の消化が優先されます。広告の運用上でCPAやROASに明確な目標値がある場合、「コンバージョン数の最大化」を選択してしまうと、目標金額を上回ってしまうことがあります。その為、明確な数値目標がある場合は、目標コンバージョン単価制や目標ROAS制を使用することが望ましいでしょう。
◆目標コンバージョン単価制
目標コンバージョン単価制では、平均コンバージョン単価が、設定した目標金額になるようにオークション単位で自動的に入札単価を調整しています。
手動の入札調整では、配信量の調整を個別のクリック単価(CPC)で調整していましたが、目標コンバージョン単価制の場合は、設定するコンバージョンの目標金額で配信量を調整します。目標コンバージョン単価を低く設定しすぎると、配信量が減ってしまう可能性があります。
目標コンバージョン単価制の入札戦略を設定している場合、デバイス調整比率は、入札単価ではなく、目標コンバージョン単価に適応されて調整されています。
【例】
目標コンバージョン単価:10,000円 モバイル調整比率:-50%
この例の場合は、スマートフォンで検索された場合、目標コンバージョン単価が5,000円になるように調整されます。
目標コンバージョン単価制の入札戦略では、キャンペーンの予算制限を考慮しないで調整をしてしまいます。その為、設定した一日あたりのキャンペーン予算が未消化になる場合があります。逆に、目標コンバージョン単価が高めに設定している場合は、一日あたりの消化金額がキャンペーン予算に達してしまい、機会損失を発生させてしまうこともあります。
目標コンバージョン単価制を導入する際は、キャンペーンの予算制限がかからないように予算設定をする必要がありますので、注意が必要です。
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リスティング広告を目標コンバージョン単価(目標CPA)で自動入札運用するには?
◆目標広告費用対効果制(目標ROAS制)
目標広告費用対効果制では、設定した広告の費用対効果の金額に合わせて、コンバージョンの数やコンバージョンの収益を獲得できるように、オークション単位で自動的に入札単価を調整しています。
広告の費用対効果はROAS(Return On Advertising Spendの略)と呼ばれているため「目標ROAS制」とも呼ばれています。
目標広告費用対効果制を使用する際は、コンバージョン計測で、コンバージョンの値を取得できるように、あらかじめ設定しておく必要があります。Google広告の自動運用では、このコンバージョントラッキングで取得できるコンバージョンの値をもとにROASを目標値に近づけるように調整をしていきます。
◆拡張クリック単価制(eCPC制)
拡張クリック単価制では、個別の入札単価を使用しながら、コンバージョンを達成する可能性が高いと判断されるユーザーに対しては入札単価を強めに調整するなど、半自動的な調整が可能になります。拡張クリック単価制では、ユーザーのシグナルに合わせて、入札単価を自動的に調整しますが、平均のクリック単価が設定した入札単価を上回らないように調整されます。
また、拡張クリック単価制の場合も、他のスマート自動入札機能と同様に、コンバージョントラッキングの設定が必要になります。これは、Google広告のシステムが、過去のクリックとコンバージョンのパターンを分析し、コンバージョンに結び付く可能性が高いと判断されるユーザーを質が高いと判断しているからになります。
※ディスプレイ広告では、コンバージョントラッキングの設定がなくても拡張クリック単価制を選択することが可能です。
拡張クリック単価制の場合は、あくまでも手動で入札単価を設定する必要があり、その設定された入札単価に基づいて自動的に調整されます。一方で、目標コンバージョン単価制などは、個別の入札単価を設定する必要がなく、スマート自動入札機能を最大限に活用することが可能となっています。ですので、スマート自動入札機能を最大限活用したい場合は、拡張クリック単価制以外の入札戦略がおすすめです。
表の導入事例では、目標コンバージョン単価制の導入で、コンバージョン単価(CPA)の改善とコンバージョン数の増加がみられました。この期間で、入札戦略の以外の変更はないため、自動入札機能の効果による改善が最も大きな要因であったと考えられます。
クリック率(CTR)、コンバージョン率(CVR)が上昇していることから、コンバージョンの確率が高いと想定される質の高いユーザーに広告が配信されていることが、数値の変化からも確認できます。
③自動入札機能を導入しても仕事はなくならない
自動化と聞くと、人の手を介さなくて良くなるのではないかという期待(運用代理店にとっては不安・・・)があるかと思います。しかしながら、結論から言うと、自動化にしたところで運用担当者の必要性がなくなるというものではありません。ですので、自動化にしたから広告代理店の仕事が不要になるというわけではなさそうです(今後はどうなるか分かりませんが…)。
むしろ、リスティング広告などの広告運用に関して必要な知識は、ますます高度化してきているといえます。
今回、ご紹介しましたスマート自動入札機能にしても、どの入札戦略を選択するのかによって運用結果は異なってくるはずです。マーケティングの目的や広告の目的などを理解したうえで、その目的達成のためにはどの入札戦略が最適なのかを考えて導入を判断する必要があります。
また、自動入札機能の効果を最大化していく為には、アカウント構成自体も変えていく必要があります。これらの作業には、人の手が必要で、そのスキルによってその後の成果は大きく変わってくることは間違いありません。
確かに、自動入札機能を導入することで、今までの入札調整という作業工数は削減することが出来ます。しかしながら、その機能を最大化していく為には、日々の思考が必要になります。自動入札機能の導入によって、運用担当者にはますます戦略的思考が求められてきているといえるでしょう。
④まとめ
いかがでしたでしょうか。Google広告の自動入札機能はますますその精度が上がってきています。その精度の高さだけをとっても、導入しない理由はないのではないでしょうか。
さらに今後は、手動の入札調整を設定していることで、不利な広告出稿になっていくのではないかと考えられます。自動入札機能に関しては、可能な限り使用していくほうが望ましいでしょう。
しかしながら、現状の自動入札機能は完璧なものではありません。キャンペーンの目的や戦略によっては自動入札よりも手動で入札を調整するべき場合があります。
運用型広告の運用担当者として必要な事は、このキャンペーンの目的とそれにあった運用機能を選び出すスキルといえます。
自動運用をまだ導入できていないという方は、是非、導入をしてみてください。その結果、煩雑だった作業工数の一部は軽減され、戦略的なマーケティング戦略の立案に時間がさけるようになるはずです。